仙界/双竜 > 闇に舞う蝶 4
-- Update :2005-10-11 --
?年後 / 黒蝶、月璃、木蓮、黒竜、星華、千鴉
「意識は?」
「……まだ戻ってないわ」
「そう……ちょっと長いね」

「ねえ、本当に大丈夫なの?このままずっと眠ったままなんてことは……」
「大丈夫。前にも言ったけど人型保ってる間は命に別状はないから。
 ……本当にヤバくなったら人化してる余裕もないだろうからさ」
「でも、あの子の状態知ってる?裂傷も酷いけど内臓なんてもうずたずたなのよ?
 あれで生きてる方が不思議なくらいだわ」
「オレ達霊獣は肉体的には結構頑丈にできてるんだよ。人間だったら手遅れでも大丈夫な場合が多い。
 自己治癒能力っていうのかな……時間経てば自然に回復するから」

「私が悔しいのはね」
「……うん?」
「自分が凄く無力だっていうこと。
 薬もダメ、メスを入れるのもダメ、結局私はあの子に何もしてやれない。
 ……私は医者なのに」
「それは……仕方ない。身体の作りがそもそも違うんだからさ。
 ゆっくり身体休めて栄養とって、それくらいしか方法は無い、かな」

「だけど貴方、以前に言ってたでしょう。地上の空気はあの子にとってはあまり良くないって。
 そんな状態で回復なんてできるの?」
「……鋭いね。
 まあ、例えて言うならあのヒトにとって地上に居るっていうことは
 水中の魚が陸に上がってきたようなもんなんだよね。
 食べるものも口に合うものあんまり無いみたいだし」
「それじゃあ……」
「最善の方法は天に帰って静養すること。でもそれは不可能だからさ。
 時間はかかるけども……待つしか無いんだよね」
「………」

「ああ、そうそう。これ」
「?……な、なあにこれ。……桃?」
「ただの桃じゃないぜ。仙界に生えてるヤツ。ちょっと行って採ってきた」
「え?せ、仙界……?」
「あのヒトさあ、コレすんげぇ好物だったんだよね。上に居る時は飽きもせずコレばっか食ってたよ。
 つっても結構上等なヤツなんだぜあっちでも。人間が食えば不老長寿の効能があるとかも聞くね」
「………仙桃?」
「特効薬って程じゃないけどさ、少しは違うんじゃないかなって」
「……。ありがとう……」
「オレにできることっつったらこんくらいしか無いから」

「あのヒトが目ぇ覚めたらさ、どうせすぐに動こうとかするだろうから。
 回復したって判断できるまできっちりベッドに縛り付けといてよ、それがアンタの仕事だろ?」
了。
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