1年前 / 月璃
体が信じられないほど軽い
不思議なくらいの高揚感と、果てしない解放感
見下ろせば遥か下の方に地上が見える
あの小さな建物の中で、小さく横たわり眠る自分がいる
脆く弱い、人の姿の自分
あの中にいるときは何もかもが苦しくて仕方が無い
思い通りに動かせない、ちっぽけなくせにやたらと重い体
すぐに疲労し、寝転んでいても一向に楽にならなかった
なのに今のこの身軽さはなんなのだろう
天空の雲を突き抜け、海を越えて遥か遠い異国の地へ行くことも
今ならきっと全然難しいことじゃない
この感覚を識っている
まだ人として生まれる以前、ほんの十数年ほど前に、自分はこの姿でいた
二年前のあの時、本当はこの命も尽きていた
人の殻を脱ぎ捨て、もっと早くにこの姿に戻っている、その筈だった
それでも諦めたくなくて、未練がましくいつまでもしがみついていたら
どちらか選べと、あの「声」は言った
自由に蒼天を駆け回ることのできる、竜の姿に戻るか
ほんの僅か残された時間を、苦しみながら傷つきながらちっぽけな姿で生き続けるか
迷いはなかった
そのために本来の姿に戻れなくなっても
今まで以上の苦しみが待っていたとしても
「僕が僕でいられるのは、『月璃』として在る時だけだから」
―――そうだ。戻らなくちゃ あの小さな体の中に
還ろう 人として生きるために
ぎりぎりの限界まで、僕は僕として生きてやるんだから
月璃過去に何度か死にかけてます。
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