3〜4年後? / −、月璃
「まあともかくさ、体力が戻るまで少し安静にしてなよ。……あ、何か栄養もとった方がいいかな?」
彼は自分の荷物から食料を取り出そうとして、はたとその手を止める。
そういえば天人は自分たちと同じものを口にするのだろうか?
案の定、彼が並べたものを見て天人はかぶりを振った。
「あ、じゃあさ、どんなのなら食べれる?おれとってくるからさ!」
身を乗り出した彼に気圧されたのか、天人は小さくため息をついてぽつりと答えた。
「………果物。さっきのところに生ってる、薄紅色の丸いやつなら……なんとか食べれる」
「ようしじゃあちょっと行って来る。少し待ってて!
あ、この隙に出て行こうとかするなよ?どうせまたぶっ倒れるのがオチなんだからさ」
目的の実は結構ちらほらと生っていた。
中でも色つやがよいものをいくつか選びながら、彼はここに来た理由を思い出す。
軽く周囲を見渡してみたが、それらしいものは見当たらなかった。
(ま、いいか。あとでまたじっくり探そう)
今はとりあえず、優先すべきことがある。
持ち帰った果実を相手が少しずつ齧り始めたのを見て、彼はほっと胸をなでおろす。
と同時に、何やら妙な既視感に囚われた。
(……この感覚、どこかで……?)
そうだ、猫。
子供の頃に仔猫を拾った時とよく似ているのだ。
怯えて警戒心剥き出しだった小さな仔猫が、出したミルクを漸く飲んでくれたあの安堵感と、同じ気持ちになっている。
(当人に言ったら絶対また睨まれるんだろうなあ)
彼のそんな様子に気づいたのか、仔猫のような天人は訝しげに眉を顰め「何?」と聞いてきた。
「いや、何でも……。あ、そうだ名前!あんたの名前、なんていうんだ?」
聞いておいて自分が名乗らないのも失礼だと思い、まず此方から名前を告げる。
少しの間不可思議な沈黙があったが、相手はぽつりと答えてくれた。
「―――月」
「……ユエ?」
割と普通の名前なんだなぁと彼は少し拍子抜ける。
もっと大層な名前があるのかと妙な期待を抱いていたから。
続きます。
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