仙界/双竜 > 金白 
-- Update :2004-01-26 --
約600年前 / 金烏、白竜
仄暗い闇の中、苦痛に耐え兼ねて呻き声を上げる
満身創痍で暫くの間は歩けそうにも無い
必死で逃げて来て漸く辿り着いた洞窟の中
生き物の気配も途切れてやっとのことで安堵した所だったのに

誰か近付いて来る
その微かな音に身を強張らせる
殺らなければ殺られる
疵だらけの身を固くしたまま、岩陰に身を張り付かせる

近寄ってきた相手は不意に此方に顔を向ける
殺らなければ殺られるのに、疵だらけの身体は言う事を聞かない
それはゆっくりとその手を伸ばしてくる
恐怖のあまり片方の爪を力任せに薙ぎ払う

白い頬に赤い筋が入る
それは見る間に濃くなり、地面に滴り落ちる
その生き物は手の甲で自らの血を拭う
そして静かに此方を見据える

瞬間、囚われる
その眼光と血の香に
力が入らない
眩暈がする

それはゆっくりとその腕を差し伸べる
「…………舐めて?」
手の甲には滴り落ちる芳しき赤い液体
抵抗する術も無く、そこに唇を付ける



「綺麗な眼だね」
「………?」
「お前の、その眼 ……太陽みたい」
「……」
「じゃあね、今からお前、金烏」
「………キン、ウ?」
「太陽って意味 名前無いならそう呼ぶよ いいでしょ?」
「………」
「……どした?」
「お前ノ、名前……」
「……あ、そか」

「白竜」
金烏(千鴉)と白竜(月璃)が最初に出会った時の話。
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