数十年前 / 雷虎、白竜
「―――お前、名前は?」
「なまえ?白は名前ないよ。けど白竜って呼ばれてる」
「白竜…… 竜、なのか?お前が?」
返答に彼は怪訝そうに眉を顰める。
竜といえば霊獣の中でも高度な存在であり、尋常でない力を持ち多彩な術を操ると聞く。
彼の前にちょこりと座っている白い生き物は、とてもそのようには見えない。
遠くからでもはっきりと判る力の輝きに惹かれ此処までやって来た。
周囲に彼らの他に生物の気配は無い。
そうなると答えは自ずと絞られてくるのだが、俄かには納得できなかった。
「いまいち信じられねェな」
「ウソじゃないもん。白、ウソなんかつかないもん」
拗ねたように口を尖らせそっぽを向く。まるで子供だ。
見た目は十代半ば程度。しかし無論それは外見上のこと。
実際はどれだけ生きているのかは判断できないが、外見にそぐわず妙に幼い言動を取る。
「そこまで言うなら証拠見せてみろよ」
「証拠?」
「人化を解いて、元の姿になってみな。そうしたら信じてやるから」
「だめー」
「……なんでだよ、そんくらい出来るだろ」
「戻るのはカンタンだけど、そしたら人の姿になれなくなっちゃう」
「………は?」
「人化は、白ひとりじゃできないもん。黒にてつだってもらわなくちゃ」
「…………竜のくせに?」
何なのだ、この生き物は。
力は確かにある筈なのに、今でも強烈にそれを感じられるのに、このひ弱さは一体何だ。
眩しい程に輝く力を持ちながらそれを扱う術を知らないと来た。
何故、こんなお宝を誰もが放っておくのか。
予想以上に価値の高かった獲物を前に、彼の胸は躍る。
何としても手に入れなければ。自分のモノにしなければ。
白竜はそんな彼をじっと見つめていた。
彼がそれに気づいて目をやると、頬を染めて無邪気にはにかむ。
「へへへ。お前、きれーだねぇ」
………思ったよりも簡単に事は運びそうだ。
白竜が悪い人に目をつけられちゃった話。
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