3〜4年後? / −、月璃
「すぐに此処から離れて。今ならまだ逃げれるから、僕が時間稼ぎしてる間に」
洞から外に出た月は、左手上空を睨み据えたまま彼に言い放った。
「……まさか一人で何とかしようと思ってるわけ?」
「狙いは僕一人なんだ。あんたがわざわざ巻き込まれることない」
「無茶だよ、そんな身体で。さっきまでふらふらだったじゃないか」
「……平気。なんとかなる」
「だけどそんな―――」
「いいから早く行けってば!あんたが居ると邪魔なんだよ!」
苛々したように吐き捨てる。
きついことを言われているのは彼の方なのに、口にした当人の方が何故か傷ついたような目をしていた。
「―――あんたが居てくれたところでどうこう出来るような相手じゃないんだ。
……僕なら、大丈夫。自分一人の身を守る位のことは出来るから」
木々が立てる悲鳴が次第に強くなってゆく。
びりびりと空気が鳴り、そういう方面に疎い彼にもこれから起こることの危険性は想像がついた。
月の言うとおり、自分は足手まといにしかならないのかもしれない。
しかし、このちっぽけな生き物を一人にして行くことはどうしてもできなかった。
そんな彼の内心を察してか、月は困ったようにくすりと笑って彼の方に腕を伸ばしてくる。
「―――感謝してる、あんたには」
彼の襟元を掴んだ手は、微かながら震えていた。
俯いているためにその表情は見えない。
「久しぶりに人と話せて嬉しかったよ」
「………ユ、」
言葉を発しようとした彼は、細い腕にどんと突き飛ばされそれを阻まれた。
『フェン―――』
凛とした涼やかな声が響く。細いながらも逆らうことを赦さない、力強い声。
『リャンシン・フーショウ・ツィレン』
ごう、と、突如として強風が生まれ出でる。
それが何か理解するよりも早く、彼の身体は後方へと吹き飛ばされた。
続きます。
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