環南/マフィア > 異国での邂逅 1
-- Update :2005-08-23 --
5年後位 / [ガルス] 星華、月璃、木蓮
こちらで暮らすようになってどれだけの時が経ったのだろう。
やはりどうしても以前の環境とは違い過ぎて、馴染めないことの方が多かった。
状況を考えれば自分は随分と恵まれているのだろう。命を落としてもおかしくないあの状態から、なんとか抜け出すことができたのだから。
新しいこの生活にも早く慣れなければならない。
幸いにも現在厄介になっている所の住人達は、一癖も二癖もある連中ではあるが、憎めない事もまた確かだった。

ぶらぶらと所在なげに街道を歩く。
この国には慣れない者には危険極まりない場所も数多くあるが、さして力のない女独り身でも比較的安全だと教えられた道だった。
一人になりたい時にはよく目的もなく街を歩いた。考え事をしながらの時もあれば何も考えずただ人の流れに身を任せることも。

今もまたそんな風に歩いていると、不意に足に何かが当たった。
転ばないよう踏み付けないよう、慌てて体勢を立て直す。見るとそこに居たのは小さな子供だった。
おそらくまだ歩き始めたばかりの頃合い。障害物を発見した小さな生き物は、その正体を確かめるようにこちらを見上げる。

泣かれるか、と思ったが、子供は泣きもせず笑いもせずただ興味深げに見つめてきた。
子供は苦手だ。どんな風に扱えばいいのか見当もつかない。
けれどすぐに喚き出されなかった分だけ、今の状況はまだマシと言える。

このまま放っておけば踏み潰されてしまうかもしれないので、恐る恐る抱き上げる。思った以上にそれは重さがあった。
目線の高さが変わっても、相変わらずそれはじっとこちらを見つめている。その顔立ちにふと、奇妙な懐かしさを覚えた。

「ママは?一緒じゃないの?」

まだ言葉が理解できる年ではないと分かりつつも、ついつい訊ねてしまう。
こんな小さな子供が一人で出てきたとは考えにくい。大方親とはぐれてしまったのだろう。ならばまだ近くで探しているかもしれない。
案の定当の本人は訳も分からずきょとんとした顔をしている。不安はないのだろうか?

「―――木蓮っ」

不意に焦燥の色を含んだ声が響く。
それが聞こえると同時に腕の中の子供が身じろぎし、答えるかのようにあーともうーともつかない言葉を発した。
子供の母親だろうか。

振り向いた先に目にしたのは、数年前に「死に別れ」た妹の姿だった。
彼女もまた自分に気づいたのだろう、びくりと足を止めて体を強張らせる。

「え、シ……星華?」

僅かの間時が止まる。
その空気を破ったのは、もどかしそうに声を上げた小さな子供だった。
月璃の姉星華の、未来でのとある邂逅。
続きます。
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