現在 / 月璃、星華
環南の実家から唐突に帰省せよとの命が下ったのは十日ばかり前のこと。
今までにこういったことは無かったので訝しく思いはしたが、従わないわけにはゆかない。
戒律の厳しい家に生まれたに関わらず、自分は過ぎるほどに自由だった。
それが自由と呼べるものか放置されていると言うが正しいのか、考えるのも億劫ではあるが。
ともかく自分に課せられた家への義務は、年明けと当主の誕生日の年に二度だけ家に顔を出すこと、その一点のみだった。
家族の繋がりというものは大層希薄で、父母とは他人行儀にしか接した記憶がない。
二つ下の弟は此方に敵意を持っているのか、たまに掛けられる声の端々に棘が感じられた。
下の姉とは最も会話する機会が多いのだが、彼女の言の八割方は当主である父の代弁だった。
上の姉に至っては此処数年まともに口すら聞いていない。
本家に着いてすぐに父の前に赴き、型通りの挨拶を済ませる。
その後自室に戻り暫く休息を取って旅の疲れが癒えてきた頃に、今度は下の姉、星華が部屋に入ってきた。
人払いをし二人だけになって初めて、彼女の口から今回呼ばれたその理由を聞かされた。
月璃の環南に強制送還の話。
続きます。
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