環南/マフィア > 屋上の白 
-- Update :2003-12-22 --
現在 / [ガルス] 月璃
目が覚めた時にはもう既に日は大分高くなっていた。
それでもすぐに起き上がると眩暈がするため、しばらく布団の中でごろごろと過ごす。
多少腹も空いてきたので、人を呼びつけて遅い朝食を持ってこさせる。

「闖は?」

用意をしている相手に尋ねると、「朝から姿が見えません」という答えが返ってきた。
聞かずとも予想はついていた返答だったが。
目覚めた時に傍に居ない日は、大抵どこかへ出かけていてしばらく戻ってこない。

さて、どうしたものか。
彼が居ないとなるとこれからの行動も随分と制限されてしまう。
一人で出かけるには、この異国の町はあまりにも危険すぎる。
護衛も無しに子供が一人で出歩くのはほぼ自殺行為に等しかった。
無事に戻ってこれたとしても、勝手に出歩くなと怒られるのがオチだ。
自分も勝手に出てるくせにと思うと無性に腹が立ってくるが。

少し前までは彼が勝手に居なくなると、その度に腹を立てていた。
だけど今では―――
…………。
やめよう、考えても詮の無い事。今は一人でも出来る事をしなくちゃいけない。
時間はどれだけあっても足りない。

半分以上手付かずの食事を置いて、上着を羽織って屋上に出る。
扉を開けると途端に頬を冷たい空気が刺した。
この場所は好きだけど、冬に長時間居ると間違いなく風邪を引いてしまう。

適当な場所に腰を下ろし、上着のポケットから白い紙を数枚取り出した。
その手で紙を鳥の形に何枚か折る。
それらを空に放した後、今度は数枚の紙を使って竜の姿を折り始めた。
鳥に比べると非常に複雑な折りすじだったが、
幼い頃から誰に教わるでもなく、自分はそれの作り方を知っていた。
竜を作っている間は無心になれる。
不思議と、心が落ち着いた。

竜の式紙が完成間近になった頃、放した鳥のうち何羽かが戻って来た。
それらを手のひらで握り潰し、紙に戻す。
と、同時に式の仕入れた情報が脳に伝達される。
欲しかった情報の大まかな概要はこれで手に入った。
詳細は自分の足で赴かないと判らないことが多いが。

上空を見上げると白いものがゆっくりと舞い降りてくる。
………雪?
気付けば身体も随分と冷え切っていた。
よくこれで指が動いたものだ。


ふと階下で人の気配が動いた。

戻って、きたんだろうか。
日常のひとこま。
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