今 / 月璃
世界は自分など必要としていない。
今この場から居なくなったとしても、同じように世界は動き、時は流れる。
ならば自分から動くしか無いじゃないか。
僕が確かに生きたという証を、この世に刻みつけるために。
生きていくべき方法はすぐに見つかった。
一族の中でも爪弾きの自分だけが、一族の誇る力を有していたとは何という皮肉だろう。
この身体では健常な連中に比べて行動も大幅に狭められてしまうが、代わりに僕の目となり耳となり、多くのことを知覚してくれる分身がいる。
折角与えられたこの力を利用しない手はない。
家という限られた世界から飛び出し、色んな人に出会い沢山のことを知った。
どれだけ虚勢を張っても自分は矢張りちっぽけな子供で、儘ならない事も数え切れない程ある。
早く大人になりたいと思う反面、時間が過ぎるのが惜しい。
大人にはなれないのだと解っているから、尚更。
了。
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