現在 / [ガルス] 月璃
―――眠れない……
床に付いてから何時間が経っただろう。
この夜何十回目かの寝返りをうつ。
胸から腹にかけてざわざわどろどろしたものが渦巻いている。
昼間会ったあの男のせいだ。
脳髄の奥の方で男の声が響いている。
何を言っていたか、思い出そうとしても思い出せない。
……きもち、わるい……
たまらなくなって上体を起こす。
そうやっていても一向に楽にはなれず、暗闇だというのに目眩が酷くなってゆく。
どの位の時間が経ったのか。
微かに遠くから近づいてくる音がある。
それが何を示すものか判ってはいたが、顔を上げる気にはなれなかった。
扉を開けて入ってきた相棒は、こちらを見て一瞬ぎくりとなる。
……何に対して、驚いているのだろう?
「―――おかえり」
我ながら間抜けな発言だと思うが、気の利いた言葉を探せる程に頭は回らない。
自分でもぎょっとする程の、低くくぐもった声。
気分の悪さはピークに達しており、顔を上げることもできないでいた。
相棒に促され、何とか横になる。
眠れないのは判りきっていたが、気休め程度に目を瞑った。
………………っ!!
布団を蹴り上げ寝台から飛び出す。
静まり返った建物の中、自分の足音だけが不気味に響いていた。
扉を開けた瞬間に肌に触れたひんやりとした外気の感触に、堪らなくなって込み上げてきたものを吐き出す。
鉄の柵に手を掛けて、何度も何度も嘔吐を繰り返す。
昨日から殆ど何も口にしていないから出てくるのは胃液しかないのに、
どれほど吐き出してもまだ体内に異物が残っているような気がした。
涙で滲んだ視界の向こう側、薄らと空は白みかけていた。
カルマと会った時の。
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