環南/マフィア > 天の星月 3
-- Update :2004-09-21 --
現在 / 月璃、星華
「……そう、それでいいのね?後悔はしない?」
「しないよ。どっちを選ぶにしろ、きっと変わりない。なら、今のままでいい。
 ………今までそうやって生きてきたんだ。だから―――」

今の自分のまま、生きてゆく。

もっと違う未来が自分に有ったなら、或いは選んでいたかもしれない。姉の言うもう一つの道を。
だけど同時に自分に残された時間も知ってしまったから。


「―――ま、それじゃ取り敢えず。体調が整うまで後もう暫くは此処で休んで、そしたら帰っていいわよ」
「……ガルスに?本当?」
「ええ。……ただし言っておいたことはちゃんと守ること。それから三ヶ月に一度は向こうで会うことになると思うから」
「え……星華が、ガルスに来るの?何で」
「何でって……私はあなたの主治医になったのよ?あなたにそうちょくちょく帰って来いって言うわけにもいかないし。
 そういうわけで、ちゃんと此方の言うことは聞いてもらいますからね」

にっこりと笑う。
その笑顔には有無を言わせないものがあったが、今まで彼女に感じていた冷たい圧力は消えてしまっていた。

此処に来るまで星華は自分にとって他人だった。
血の繋がりがある分、他のどの関係よりも遠い「他人」だった。
「もっと違う家に生まれていたら」とは、何日か前に星華が漏らした言葉だ。
距離を感じていたのは自分だけではない。この家に生まれた者の誰もが、ずっと一人だったのだ。

傍に居てくれる存在が無かったら、一体自分はどんな風になっていたのだろう。


………少し、眠ろう。
まだ疲れは完全に取れきっていない。
焦っても仕方が無いが、少しでも早く戻れるように。
時間はもうそんなに残されていないのだから。
了。
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