少し前 / [ガルス] 月璃
「―――何て事してくれたんだよこの大馬鹿ッ!!!」
後にも先にも、あいつに対してああまで激昂したのは他に無かったんじゃないかと思う。
若干躊躇いがちに事の顛末を報告に来たあいつの言葉を聞いているうちに、目の前が真っ暗になっていった。
冷静に思考することができなくなる。自分がどれだけ酷い罵詈雑言を浴びせたのか、それさえも覚えていない。
今のままで居ることなんて無論嫌だったけど、これ以上壊れてしまうなら何もしない方がマシだった。
それでどんどん自分が追い詰められていくのも分かってたけど、どうしようもない。
怖かった。離れていってしまうのが。
例え嫌われていたとしても、それでもまだ傍に居てくれる間は…まだ、大丈夫。そう自分に言い聞かせて。
此方から言わない限り、向こうは離れていかないだろう。そういう狡い計算が少なからずあった。
……尤も向こうが要らないと言えば手を放すくらいの覚悟はできてはいたけど。
あの時。
生涯告げないだろうと思っていたあの言葉を口にしたのは、何も見返りを求めてのことじゃない。
はぐらかされるのは最初から予想がついていた。
ただ、告げたかった。伝えておきたかっただけ。
言ったところでどうにかなるようなもんでもないし、何だか無性に言いたい気分だったから。
怖い
自分は所詮ちっぽけな存在でしか無く、居ても居なくても世界は何一つ変わりはしない。
だから結局自分で動くしかない。生きていることの意味を見出せない。
自分がどれほど弱い立場か知っている。
傍に居てくれなくちゃダメで、そしてそれは他の誰でもなく、あいつじゃなきゃダメで。
居なくても生きていくことはできるだろう。だけどきっと、満たされることは無い。
怖い
このまま失ってしまうのだろうか
今頃もう耳に入ってるかもしれない
どんな風に思っただろう?
怖い
失いたく、なかった
相棒とのぎくしゃく期間。
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