少し前 / [ノルフィス] 菖蒲(ミザル)、桔梗
「―――それでも、俺は菖蒲に生きててほしい
勝手と言われようが、生きて幸せになってほしい」
彼の声はとても静かに響く。
「……遠く離れてても俺、菖蒲が楽しそうに過ごしてる事感じてた
折角手に入れた幸せ、手放しちゃ駄目だ」
「だけど、私は……!」
「ずっと一人で、全部背負ってたろ。俺の分の罪まで
だから今度は…今度からは、俺が全部引き受けるから」
「―――駄目、そんなの駄目よ!
あなたは何も悪くないもの、全部私がしてきたことだもの……!」
必死でかぶりを振る。だけど彼は静かに微笑んで―――
「……菖蒲は、ずっと俺のこと護ってきてくれた
だけどこれからは、俺に守らせてよ」
彼の掌が、私の額にかかる。
「守りたいんだ。菖蒲の幸せ」
そう言って彼は…桔梗は、とても綺麗に笑った。
―――菖蒲が笑っててくれるなら、俺は十分幸せだよ―――
雪が、はらはらと舞う。
最後に見たのは、彼の姿。
大切な大切な、愛しい
私の半身―――
続きます。
Copyright (C) 2020 kohituji. All Rights Reserved.