イズルビ/花人形 > blue flowers 1
-- Update :2003-09-18 --
少し前 / [ノルフィス] 菖蒲(ミザル)、桔梗
しんしんと雪が降り積もる。


白い雪は目の前にあるモノの上にも静かに積もり、やがて全てが覆われ見えなくなってゆくだろう。
だけど雪の白さが全てを隠したとしても、いずれ土に還ったとしても、私の罪は決して消えはしない。
私の前に横たわるのは、たった今この手で絶った命の抜け殻。
ついさっきまで息をして動いていた、かつて仲間だった者のなれの果て。

涙が止まらない。
いっそ正気を手放せたなら、どれだけ楽だっただろう。

幸せになりたかった。ずっと、あのひとの傍で静かに暮らしていたかった。
だけど幸せを望んだのはきっと彼も同じ。
彼の幸せを奪ったのはこの私。
だから私は、例え彼に殺されても文句は言えない。言える筈も無い。

以前の自分なら、きっと彼の希望どおりこの命を差し出していただろう。
それなのに手をかけられた時、あのひとの静かな笑顔が頭をよぎった。
失いたくない。
この愛しい暮らしを、壊されたくない。
そう思った瞬間、力は暴走してしまった。

浅ましい女。ずるい女。
自分の望みのために、どれほどの命を奪えばいいのか。


しんしんと雪は降り積もる。

雪は白くて、無垢なほどに白くて綺麗で。
私だけが、罪に汚れて真っ黒だ。
続きます。
Copyright (C) 2020 kohituji. All Rights Reserved.