少し前 / [ノルフィス] 菖蒲(ミザル)、桔梗
狂風が巻き起こる。
無形の刃が空を舞い、木々を薙ぎ倒す。
大木が内部から音を立てて爆ぜる。
―――全て私が引き起こしていること。
一人じゃ何も出来ない。
半身たる弟の中に眠る力を引き出し、操り、周囲のモノを破壊する。
それが、私に与えられた能力だった。
そこに彼の意志など必要が無く、真の「人形」でしかない彼の存在がたまらなく哀しくて
禁忌を侵し、彼を解放した。
離れていても構わない。
例え二度と会えないとしても、彼が自分の意志で生きていってくれるなら
それで、良かった。
再び私が彼の中の力を引き出すことになれば、彼はまた人形に戻ってしまうかもしれない。
それだけは何としても避けたかった。
なのに―――
感情が昂ぶりすぎて制御できない。
止まらない。止められない。
声にならない悲鳴が、白い世界を切り刻んだ。
続きます。
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