少し前 / [ノルフィス] 菖蒲(ミザル)、桔梗
それが起こった瞬間、それまで昏々と眠り続けていた少女が不意に目を覚ました。
「―――居た。菖蒲、生きてた」
告げられた言葉の思いもかけない内容に、その場に居た者達は皆、少女に目を向ける。
「ずっとずっと、北の方。……寒い、とても寒い国」
情報はつたない言葉となって、彼女の口から伝えられる。
端的ではあるものの、その言葉は全て真実。
「柊が今、壊れた。……同じ場所で」
出てきた名はかつて共に居た仲間の一人。
そしてその瞬間、他の者達がその意味を理解するよりも前に
その場に居たうちの一人――青い髪をした少年の姿が、忽然と空中に掻き消えた。
平和に暮らしていたが追っ手に見つかり存在が知られてしまった菖蒲近辺。
続きます。
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