5年前? / クローディア、ソロ
脳裏に浮かぶのは遠い過去の光景。
あたしの世界はあの屋敷の中だけで完結していた。
ゆっくりと夕闇が広がり始める頃、ぼんやりと外を眺めていた。
敷地内に入ってくる三つの人影が目に入る。
大きい二人はよく知っている、何度も屋敷を訪れている人たち。
その二人の脇にいる小さい影に目がとまる。
自分と同じくらいの年頃の子を見かけるのはそれが初めてだった。
目が合ったことは何度かあったけど、言葉を交わしたのはほんの数度。
教えてもらった名前は宝物のように覚えている。
嬉しくてにこにこしていたら、不思議そうな顔をされた。
やがて彼を見かけることは無くなる。
だけどその後も彼の両親の来訪は途切れることなく続けられていた。
…ああ、今になってみれば分かる。彼らは父様と母様の鎖だったのだ。
家族を奪われ一人きりになった少年の前には、一体どれほどの闇が広がっていたのだろう。
あたしが両親に守られて何も知らずに過ごしている間も、彼はずっと独りだった。
「……泣いているのか」
彼の指が睫毛に触れる。
すぐ下にある瞳はもう何も映すことはない。その手によって光は永遠に奪われた。
あの瞬間からあたしの小さな世界も壊れて、同じ闇の中に放り出されてしまった。
溢れ出るのは憎しみか哀しみか。
答える代わりにしがみつく。言葉なんて何も出てこないから。
どれだけ足掻こうとしてみても、あたしはもうとっくに縛られている。
痛みとともに何もかもを受け入れて、そうして共に
この闇の世界で生きてゆこう
相手の正体を知った直後のアレコレ。
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