1年前 / 月璃
真実を伝えるべきか否か、決断するのに随分と躊躇した。
だけど告げない訳にはいかない。
偽りを口にするのは、この仕事に携わる者としての誇りが赦さない。
最初から嫌な予感はあった。
断ることもできた筈。しかしそうすれば、彼はいつまでも探し続けることも容易に想像できた。
対象が見つかればそれでよいが、見つからなかった場合彼はきっと永遠に囚われる。
自負するわけではないが、自分ならばそれを止める自信があった。
少なくとも生死くらいは確認することは可能であるから。
仕事の上で親しい間柄の相手を対象とするのは苦手だった。
見ず知らずの他人ならいざ知らず、近しい相手の通常なら知り得ることのない真実は、時として非情なまでに残酷なものなのだ。
知らなくて良いことは数え切れないほどにある。知らない方が幸せなことも。
だから今までずっと、自分の近辺の人間に関わりそうな依頼は避けてきた。
彼は自分のそういう部分を知っている。その上でなお縋らずにはいられなかったのだろう。
それほどに切羽詰まっていた。
自分にこの話を持ちかけてきたときから、彼もある種の予感はあったのだと思う。
友人である彼から請けることとなった最初の依頼は、自分にとっても彼にとっても非常に重いものだった。
彼にとって最も痛い現実をこの口から伝えるということに重責を感じつつも、
反面その役目が自分であったことにどこかほっとしていた。
この現実がどれほど彼を苦しめるかは判らない。
この先彼にどんな未来が待っているかも判らない。
だけど伝えなければならない。
それが、今自分に課せられた義務。自分にしか出来ない事。
彼女はもう、この世の何処にも存在しない。
月璃が何かを知っちゃった。
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