ガルス/J.H.P. > 月夜の裏通り 
-- Update :2003-09-17 --
3年前 / 乱、月璃
―――尾けられている。
しばらくは気付かなかった。相手は……おそらく一人。
此方から一定の距離を保ち、付かず離れず。素人ではなさそうだ。

脇道に入り、少し進んだところで振り向いて、見えない相手に呼びかける。
「隠れてないで出て来いよ。何が目的か知らないけど」
少しの間と、静寂。

「―――意外に早く気付いたね。もうちょっとは時間かかると思ったけど」
頭上からかけられた声は、予想外に幼いものだった。

「あんた、乱…だろ?朔良んとこの子飼いの双子の」
塀の上に立つのは随分と小柄な人影だった。……子供?
黒っぽい服を着て月光を背に浴びているため、顔までは確認できない。

「……誰だ、お前」
「情報屋。……そうだな、月、とでも呼んでよ」
そう言うと子供は塀の上から器用に飛び降りた。体重を感じさせない猫のような身軽な動作で。

年の頃はおそらく十を少し過ぎた程度。幼い顔立ちの割に一見そう見えないのは、その瞳に宿る眼光のせいか。
「それで? その情報屋が、俺に何の用」
「正確にはあんたにじゃないけど。あんたんとこのボスにね、頼まれてた仕事があって」
「なら、直接朔良の所に行けばいいだろう」
「ま、そうなんだけど。あのヒトちょっと苦手なんだよ僕。人間的には嫌いじゃないけどね。それに……」

月と名乗った子供は不敵に笑う。その表情から子供らしさは微塵も感じられない。
「あんたに一度、会っておきたくてさ」
乱と月璃の出会い。
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