1-2年位前 / 凛花、梅吉
「―――鬼いうてもわいは半分出来損ないでしたよって、直接こっちの世界に干渉するんはあかんかったんですわ。
自由に動くためにはこちら側に繋がる『扉』が必要だったんですなぁ」
「それがアタシって訳?……でもそれなら、もっと力の強い人だって沢山居るわけだしさ」
「相性いうんもありますやろ。それになまじ力の強いお人やとあきまへん。わいを支配下に置いて意のままにしようとしはりますしな」
「……一応、アタシもアンタの主人なんだけどね……?」
「無論承知しとります。姐さん程理想的な主は他におわしまへん」
にこにこと無害そうな笑みを浮かべる男を、凛花は睨みつける。十年もの付き合いになるが、未だこの男の内面は読めない。
利用されているだけかもしれないとは思わないでもなかったが、今のところこの鬼によって不利益を被ったことは無い。
それに彼が傍に居るということがすっかり日常と化してしまったから。
このまま騙され続けるのもいいだろうかと、そう思っている。
所詮自分の頭でどれだけ考えたところで、答えが見つかるかどうかも怪しいのだから。
季節はあの頃と同じ梅の花の咲く頃。
花の香が仄かに鼻孔をくすぐる。
どこまでいくのだろう。この先何が待っているのだろう。
とりあえず一歩ずつ、歩いてゆくことから始めてみよう。
続…くのかもしれない。
Copyright (C) 2020 kohituji. All Rights Reserved.