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遙か遠く天空の彼方
誰も知らない場所にある楽園に
名前すら無い一族が存在した
誇り高く美しき一族
彼らは其の背に気高い翼を持ち
飛翔することに至高の歓びを感じていた
ある時一族の若者が罪を犯す
彼らにとって最も赦されざるべき
同族殺しの罪を
若者は暗い塔に幽閉される
それは飛ぶことを何より愛する彼らにとって
死よりも辛い拷問だった
彼の世話をするのは美しき一人の娘
やがて二人は恋に落ちた
娘は罪人の子を宿す
罪にまみれた男は飛ぶことを許されず
そしてその血を受け継ぐ子供もまた
生まれながらにして罪の証をその身に刻んでいた
生まれた子には翼が無かった
彼らにとって最たる誇りである
天空を自由に駆け回る翼が
翼の無い者は天空の楽園では生きてゆけない
罪人の子は生まれて間もなく
罪人として地上に堕とされた
*
少年はいつも空を見上げている
何故これほどまでに天空に焦がれるのか
その理由も分からないまま―――
伝承的な。
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