数百年前 / カルマ
白い太陽は酷く眩しく、煩わしかった
隣に居るものが自分に話しかけている
無難に言葉を返しているが、その内容は一つとして彼の中には入って来ていない
話しかけてくる相手の顔も名前も、彼は認識していない
自分に親しげに笑いかけてくるこれが誰であろうと、彼にとっては大きな問題ではない
白い光が、ちりちりと彼を焦がす
焦燥、欲求、衝動、空虚感、それら全て
普段通りの、ずっと変化の訪れない光景
不満が有る訳では無く何かを欲する心が有る訳でも無い
一体何が違っているのだろう
そんな問いは無意味だ
最初から、もう既に全てが違えてしまっている
白い熱が彼を灼き尽くす
あらゆるものが何も無い白で埋め尽くされてゆく
遠くから悲鳴が聴こえる
目の前に伏した肉体から、赤い染みが徐々に地面に拡がってゆく
光を失ったその瞳が自分を凝視していることも
右手に伝わるぬめりとした感触も
次第に周囲に拡がってゆく喧騒も
何一つとして彼の気に止まることは無い
ただ太陽だけが、酷く眩しかった
狂気の一歩手前。
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