シエルの未来

語りシエル

もう少し先の未来、シエルは小さな喫茶店兼小料理屋でバイトを始めます。
きっかけは雨の日。
夕食の買い物の後突然の雨に降られ、とある店の軒下で雨宿りします。
なかなか止まずに困っていると、店の中からママさんが出てきて彼女を招き入れ、温かいお茶をご馳走してくれます。
そこは若い夫婦が営む、小さいけれど雰囲気の良い店でした。
前々から自分も働きたいと思っていた彼女は、そこでアルバイトに雇って欲しいと願い出ます。
バイトは週に2、3日。
店の手伝いをしながらその合間にママさんに料理を教えてもらったりもしました。
これによって彼女の料理の腕は、少しずつ上達してゆきます。
家から店までそんなに遠くも無いのに、毎回送り迎えがありました。
そんな彼女たちの様子をマスターたちは微笑ましく見ていました。
今から3年の後、彼女には1歳になる息子が生まれています。
そして子供が出来たと分かった時から、彼女はマスター夫婦の家でお世話になっていました。
彼らは父のようであり母のようであり、また年の離れた兄姉のようでもあり。
孤児であった彼女にとって、そこは初めてできた"故郷"と呼べる場所になっていました。
子供が大きくなった頃、彼女は彼らの家を出てアパートを借ります。
そして洋菓子店で働き出します。
この頃には彼女の料理の腕は誰もが美味しいと認めるほどに上達していました。
一人息子のアキも大きくなり、年の割に妙にしっかりしたところを見せるようになりました。
どちらが親か分からないほどに。
25歳の時、彼女は永遠の眠りにつきます。
それが彼女の限界でした。
元々心も体も弱い人で、ここまで生きてきたのはそれでも奇跡に近かったと。
本来ならもっと前に尽きてもおかしくなかった命。それを許さなかったのは、生まれてくる子供の存在でした。
アキの誕生によって彼女はやっと、笑顔を取り戻します。
以前と同じようにはもう笑うことは出来なかったけれど、それでも彼女は幸せに過ごしていました。
その後アキ少年は、すくすくと元気に成長してゆきます。