花人形の作り手である刈谷博士は、若い頃は京筑の人形師の許で技術を学びました。 やがて故郷であるイズルビに舞い戻り、学んだ技術に独自の方法を織り交ぜて改良・研究。彼独特の人形を作り上げるまでに到りました。それが5年前のこと。 目的は定かではありませんが、最終的には自分の意のままになる軍隊をつくるつもりだったとかそうでないとか。 彼の作る人形は自我を持ち、そしてそれぞれ特異な力―――所謂超能力を持っていました。 博士は取り憑かれたように人形を作りつづけます。出来た人形は全部で十体前後。
博士が最後に作ろうとしたのは彼の集大成とも言えるべきもの。 手を触れずとも対象に力を及ぼす事ができる存在。念動力とか瞬間移動とかそういった類の。電撃生み出したり爆発を起こしたり衝撃波を与えたりなど。 でもそれを作るには力が大きすぎて、一体の人形にはとても収まりませんでした。 そこで人形を二つに分けることにしました。それが桔梗と、その双子の姉人形の菖蒲です。 力の源は桔梗の中にあり、それを自在に制御・操作する術を菖蒲が持っていました。
最初に作られたのは菖蒲。しかし無論一体ではまだ何の力も持っていません。 さて、この博士には息子が一人おりました。 博士の許にいつも居たというわけではないのですが、時々手伝いなどに来ていたようです。 自我を持ってはいたもののまだ未完成だった菖蒲は、博士の傍に常に居たため、息子とも接する機会が多かったようです。 やがて菖蒲は博士の息子に淡い想いを抱くようになりました。 ところが彼は、まもなく病気で死んでしまいます。 そして博士はその時作っていた人形に、息子の姿を映しました。
出来上がった人形――桔梗は、自我を持っていませんでした。 「力の器」であるために、余計な感情が邪魔だったためです。 それと博士の息子と同じ姿、というのも関係しているのかも。せめてもの親心? 菖蒲はその事を非常に嘆き悲しみました。 しかし博士の命令があると、菖蒲は桔梗の中の力を振るわなければなりません。 自らの意志も無く、ただ操られるがままに力を振るい人を殺めてゆく弟。 人形であるのでそれは当然といえば当然のことなのだけど、下手に自分が自我を持っているため、菖蒲にはどうしてもそれが耐えられませんでした。 そして彼女は暴挙に出ます。
菖蒲は、桔梗の力の大半を使いきり、博士を殺しました。 そして彼女自身の中にある封印を解きます。桔梗の心を解放するために。 自分の主人に対する最大の裏切りを犯したことにより、当然彼女も無事では済みません。 そのことも覚悟の上の行為でした。
目覚めた桔梗は全く別の土地にいました。 それまでのことは何一つ知りません。 憶えてない、のではなく、知らないのです。 色々な事がプログラムされているため、自分が人形であることとかは知っていますが。 以前に出会った人とか、体験した経験とか。そういうものは一切記憶がありません。初めから。 ただ、精神的な記憶は無いものの肉体的なものはあります。 だから懐かしいとかそういう感情はあるようです。
菖蒲が桔梗の力を使って博士を殺めたとき、そこにいた誰もが菖蒲も博士と共に命を落としたと思っていました。 人形は生みの親を手にかけることは出来ない。 仮にその行為に及んだ場合、脳が破壊する仕組みになっているので。 そしてその事を人形達の全員が教えこまれていました。無論菖蒲も例外ではなく。 だから彼女は、自害覚悟で手を下したのです。 ところが菖蒲は命を落としたりしませんでした。(ちなみにこのことには誰も気付いていません) 博士の思惑は定かではありませんが、彼は菖蒲と桔梗にはその脳のリミッターをつけていなかったのです。 封印を解いた桔梗の傍に居ると力を引き摺ってしまう恐れがあるため、菖蒲はひとまずその場を人知れず離れました。
この時初めて自我を持った桔梗は、自分が何者かも判らず一人ふらふらと彷徨い歩いていました。 彼を拾ったのは一人の若い女。 陶子と名乗る彼女は、桔梗たちの生みの親である博士の娘でした。 彼女は死んだ筈の弟とそっくりな桔梗を見て驚きます。 だけど自分が何者かもわかっていない彼を放っておくわけにもいかないので、とりあえず家に連れて帰りました。 陶子は父親と幼い頃に疎遠になっていたため、ほとんど交流はなかったものの3つ違いの弟とは割と仲が良く、ちょくちょく会ったりしていました。 彼から博士のしていること、人形のことなどは聞き及んでいたために、桔梗がその花人形であるということはすぐに気づきます。 そして何も判らない桔梗に自分が知っている範囲の事―――彼が人形であることや、花人形がどういうものであるかなどをかいつまんで教えてやりました。 少しの間彼女の家にいて、やがて桔梗はそこを出ます。 かといって特に何もすることがなく、ただふらふらとしていました。 何かを探さないといけない、なんていう思いだけはあったようですが。 これがキャラマ登録時点での桔梗。
博士の死後、他の花人形たちはそれぞれの道を歩み出します。 その殆どが好き勝手に出てゆきましたが、幾人かはその場に留まりました。 動くことの出来ない睡蓮(※情報収集系人形)を含めて2、3人くらい。 その中の一人が、ある日ふらふらしていた桔梗に接触します。 そこで初めて桔梗は、片割れの姉である菖蒲が(自分を使って)博士を殺した事、そしてそれによって人形達がバラバラになってしまった事を知りました。 そしてこの時菖蒲も死んだことを聞かされますが、それを聞いてもなお彼には片割れが生きていると言う確信がありました。 おそらく双子のカンのようなもの。
さて、ここに一人の人形が居ます。 その人形は花人形達の中でもどちらかというと落ちこぼれ組でした。 博士が死んで自分が何をすればいいのか分からないで途方に暮れていた一人。 そしてその人形は、偶然にも菖蒲の生存を知ります。 おそらくこれこれこーいう不審な娘ッ子をどこそこで見かけたとかそんな噂を耳にしたような感じで。 何故、主人を裏切ったのに彼女は生きていられるのか。 あれほどまでに博士の寵愛を受けていたくせに彼を殺した彼女が、自分たちの居場所を奪ったくせにのうのうと生きている彼女が、どうしても許せなかった。 彼(だか彼女だか)の憎悪の矛先は一身に菖蒲へと向けられます。
一方の菖蒲。 彼女は博士が死んだ時から、菖蒲と言う存在を抹消しました。 名前も捨てて国も捨てて。 とは言っても記憶を失ったわけでも別人格に成り代わったわけでもありませんが。 情報収集系能力者の睡蓮は、他の人形達が今どこにいるか、などを把握する力も持っています。 菖蒲と桔梗は対であり、力の殆どは桔梗の方に存在するわけですが、その力を自在に操る菖蒲の精神操作系能力は尋常ではないわけです。 つまり、睡蓮の力よりも菖蒲の力の方が勝っていた、ということで。 睡蓮のセンサーに引っかからなかったために、他の人形達は菖蒲ももう死んだものとそう判断を下したというわけです。
※小話
菖蒲の追手はいずれ彼女を見つけ出します。 そして彼女を襲うのですが、返り討ちにあってしまいます。 菖蒲にしてみればそれまでの平和な日常を失いたくないとの一心で、思い余って追手を殺害してしまいます。 それは屋敷から離れた場所で、誰にも目撃されずに。 そしてその瞬間、力を放った菖蒲の存在は睡蓮のセンサーにひっかかります。 それと同時に人形が一人、命を落とした事も。
※小話
菖蒲の記憶を封じてアルコルさん(@セシルさん)家に預けたあと、しばらくの間ノルフィスをうろうろしてました。 いえ実を言うとぶっちゃけ迷ってたんですが。 イズルビ→ノルフィスへの移動はそんな難しいもんでもなかったんですね。姉の気配をたどることで。フタゴの神秘。 でもその後、いざ帰ろうとしても帰れなかったんですよ。自分が今までいたとこが何処か分かんなくなっちゃって。 そいでしばらくホケーとうろうろしてました。途中温泉とかも見っけたかもしんない。
さてさて、その頃丁度凛花さんもノルフィスに来てたんですね。こっちはこっちで目的があって、それを達成した後バッタリ桔梗さんに会う。 無論この2人これが初対面ですが。異国の地において2人ともイズルビ人だってぇことでなんとなく心強かったりしたり。 で、桔梗さんが迷子てこと聞いて、よしアタシが連れて帰ってやろうどんとまかしときー! ………てなやりとりがありまして。 連れ立ってノルフィスを後にする。
ところで凛花さん、イズルビに戻る前にちょいと寄る所がありました。 ノルフィス行きで色々お世話になったてことで環南に。環南つうかまぁ千鴉さんとこですけどね。 そこで暫し滞在しているうちに成り行き上桔梗さん環南にとどまることになりました。 菖蒲のことがひとまず落ち着いて後、特に桔梗さん何もすることが無かったって言うか。イズルビ戻ってもホケーとして過ごすだけだし。 つうか桔梗さん、力はあるもののあまりにも物知らずで世間知らずでボヘーっとしてるから周囲がチョット心配になったっていうか。 てなことで、千鴉さんの弟分として世渡りとかアレヤコレヤ色々学ぶことになりました。
※小話