一見落ち着いて冷静そうに見えるが内面結構激しい。しかしそれを表に出すことも少ない。一人で多くのものを抱え込んでしまうようなところがあるが、それに見合うだけの器も持ち合わせており、あまり危うさも感じられない。親しい者の間でのみ、素の部分を出している。
千年ほど前に前竜王の子として生を受ける。竜族においては極めて珍しい一卵性の双児として生まれたため、幼少期は城外で過ごした。双児の仔竜は通常に比べて体が弱く、成竜となるまでの生存率も著しく低い。せめて自然の中で伸び伸びと育てようと母竜が城から連れ出したのだった。王子として軽んじられていたために、城外で暮らそうとそれを咎められることはなかった。 しかし程なくして母竜が死去し、双児の仔竜はとある老竜の元に預けられる。周囲の予想に反し、双児の王子はすくすくと育っていった。 人間年齢として5~6歳の頃、ようやく城から正式に王子として迎えられた。ただし与えられた王子の地位は一つきり。双児の王子は二人同時に表に出ることを許されず、名前も一つだけしか与えられなかった。当時は他の親族に埋もれる程度の力量しかなく、目立たないがゆえの自由もあり、こっそり城を抜け出したりなど割合奔放な少年時代をすごした。 少年期を脱しかけた頃に戦場に出始め、その頃から王子は急激に力をつける。他の面々ともひけをとらなくなり、やがてその中でも一目置かれる存在となった。それまで「王子」としては歯牙にもかけられない存在だったが、こうなると周囲の者も認めざるを得なくなる。 父王から竜王の座をうけついだのは数十年前。老王にはまだ多大なる力が残っていたが、片翼を失ったことが理由で現役を引退、今では深い洞窟の奥で隠居生活を送っている。新竜王の選出は老王の判断。長老会やら他の王子やらからの反対の声も多々あったが、血統、力量、資質等から判断しても彼が選ばれたことは妥当だったと言える。 王になってからの彼の行動は、これまでの竜族の歴史から見ても異彩を放っていた。その中でも一際周囲を驚かせたのが人間側との不可侵条約の締結。この革新的とも言える竜王の為政に対し、未だ竜族の中でも反対意見が多い。しかし僅かずつではあるが、国内で変化が生まれつつあるのもまた事実である。 近年になって長老会の一部から、人間側王女との婚姻の提案が持ち上がった。人間に肩入れするならば、その中から妻を娶るくらいしてはどうかと。それにはまだ若い竜王を試しているという意味も汲み取れなくはない。故に当初竜王も乗り気ではなかったが無下に一蹴するわけにもいかず。現在人間側に話をもちかけ目下様子見といった状態。