藤香、仙界生まれの霊獣。 数千年前に地上に降りる事を望む。 地上で暮らすには不向きだった自らの一部を切り離し、禁域に捨てた。 地上に降りた後は妖怪として生きていたが、時を経るに従って徐々に神格化。
一方禁域に捨てられた残骸は、どういった偶然か次第に意思を持ち始め、 やがて本体である藤香の元に戻る事を強く望むようになる。 そこにたまたま現れた某人の手によって解放され、藤香の残骸=カゲは地上を目指した。
カゲの降りた場所はイズルビの山奥深く。 地上は予想以上に動きづらく、藤香の元に行くことはできなかった。 暗い谷底から時折訪れるヒトやケモノの精を喰らって生きのび、 そうして長い年月が経ち、次第にカゲは力をつけ、明確な自我を持ち始めた。 やがてカゲの望みは藤香の元に戻る事から、彼女を乗っ取る事へと変貌する。
千年前。藤香とカゲは相まみえる。 力の上では藤香の方が勝っていたが、 本能のみから成るカゲを倒しきることは至難の技だった。 最終的に藤香が一歩及ばず戦いの果てに倒れる。 ほぼ相打ちにまで持ち込んだため、相手に喰らわれるという事態には至らなかった。 辛うじて残っていた核の部分は某関係者の手によって安全な場所に封印・守護される。 そして藤香縁の人間に社を作らせ、時が来るまで眠りに就く事となった。 一方カゲは、それまでに手に入れてきた力の大部分を失う。 そして再び山奥の谷底にひそみ、千年の歳月が流れた。
今から百年ほど前に長い眠りから藤香は目覚める。 しかし肉体の方はいまだ完全に戻りきってはおらず、意思のみが時折外界へ抜け出していた。 その状態の彼女は、霊力の強い人間かもしくは人外の存在のみにしか知覚できなかった。 18年前、社の血筋として胡春という名の娘が生まれる。 彼女は生まれつき視力が弱く、 そしてその分、通常では知覚できないようなモノも敏感に感じ取ることができた。 やがて彼女は社の中の藤香の存在に気づく。 他人と接することの少なくまた社の巫女となった彼女にとって、 「御社さま」の存在は大きなものとなっていた。
時は満ち肉体を得て動くのに支障が無くなった頃、 封印は解かれ藤香は解放された。